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珍しいキノコ


このあいだ、「珍しいキノコ舞踊団」の公演を見にいきました。
名前も面白いけど、
(そういえば、「飛んでるキノコ」っていうサーカス団が、ドイツにあったなあ)
このカンパニーのパフォーマンスの場所も、いつもなかなかユニーク。
どこかの会社の倉庫でやったり、美術館の中庭を使ったり。
今回の舞台は、目黒のクラスカという、アート・ホテルでした。
1階は広いオープンカフェになっており、2階がギャラリー。
この2つのスペースを用いて、パフォーマンスが展開されたのです。

少し早めに到着した私は、カフェの片隅で、カプチーノを飲んでいました。
中央のテーブルには、「リザーブ」のカードが立てられており、そこには、キノコの絵が。
やがて、時間になると、さりげなく、春らしいブラウスにスカート、あるいはパンツ姿の6人の若い女性が入ってきて、テーブルに席を取り、おしゃべりを始めます。
何でもない日常のなかの、何でもない風景。
カフェの他のテーブルでは、人々が、いつものようにお茶を飲んだり、話しこんだり・・・。
ウェイトレスが注文を取り、キノコのテーブルにも飲み物が運ばれ、ますますにぎやかに、盛り上がります。
身振り手振りがしだいに大きくなり、やがて、テーブルの上に飛び乗ったり、椅子を背に屈伸をしたり。
それがごく自然に、ダンスの動きへとつながっていくのです。
まるで、ダンスの誕生を目撃しているみたい・・・。
大きな窓から、差し込んでくる日の光が、眩しいほどです。
キノコのパフォーマンスに気付いた客が、興味深げに眺めはじめます。
いっこうにおかまいなしに、冗談を言い合っては大笑いしているテーブルも、相変わらず本を読みふけっている女性も、愛を語らっているカップルもいます。
なんと、美しい光景でしょう。
なんと、おしゃれな空間でしょう。

キノコの女性たちは、やがて席を離れ、カフェを抜けて、2階へと階段をのぼりはじめます。
観客も後を追って、ぞろぞろと、2階へと。
そこに用意されていたのは、ソファやら、ベッドやら、短い階段やら、シンプルな女性の住まいを想像させる家具でした。
そのなかで、朝目を覚まし、歌を歌ったり、友人が遊びにきたりして過ごし、夜眠りにつく・・・そんな生活のなかの、さりげない動きが繋がって、ダンスになっているのです。
フロアで、観客は自分の椅子や座布団をかかえて、あいた空間に移動し、パフォーマンスに巻き込まれます。
鍛え上げられた特別なダンサーの、特別な舞台――そんなところからは、はるかに遠い、私たちの日常のすぐ隣にある、ダンスという印象です。
こんなダンスの楽しみかたも、あるのです。

見ているうち、観客も体を動かしたくて、うずうずしはじめます。
そして、そんな絶妙なタイミングで、ひとりのダンサーが、
「私たちと一緒に、踊りませんか」
と誘いかけるのです。
「簡単ですよ、ほら」
その動きは、やっぱり私たちの日常の動作と繋がっていて、プロのテクニックなどは必要がないように思われました。
あんなふうに体を動かしたら、気分いいだろうなあ・・・。
シロウトの私にも、できるかも・・・。
みんな、そう思ったにちがいありません。
ぞろぞろと、それこそ、半分近い観客が、前に出ました。
そのなかに・・・私も紛れこみました。
ひとりではちょっと恥ずかしかったので、知人のソエジマさんを引っ張って・・・。
ダンサーも観客も入り混じり、長い大勢の列が、会場中を練り歩き、動き回りました。
見よう見まねで手足を伸ばし、飛んだり、跳ねたり・・・私の動きがダンスになっていたかどうかは、はなはだ疑問ですが、そんなことにはお構いなく、
あ〜、楽しかった!
気持ち良かった!
すっきりした!

ただひとつだけ・・・。
どうして、こういうときに限って、私ったら、動きの取れないタイトのロングスカートなんて、はいていったのかなあ!!!



2004年4月  
楠田 枝里子